ネガティブな反すうを手放すヒントになる「公正世界仮説」

投稿日(Posted on): 2023年12月6日 | 最終更新日(Last Updated on): 2024年5月15日 by 河野傑

あんなことをしてしまった。

今でも過去の失敗や間違いを引きずっている。

なんであんなことしてしまったのだろう。

過去に戻ってやり直したいくらい。

   

でも、タイムマシンでもない限り、できるはずがない。

自分はダメな人間だ。

なにより、自分で自分のことが許せない。

自分が悪いことをしてしまったという感情を抱くと、自分を責めるようになります。

   

さらには、

こんな自分が幸せになってもいいのだろうか。

幸せになる資格なんてないんじゃないか。

そんなところまで思ってしまう。

そして,楽しいはずの趣味や旅行も楽しめない。

人間関係も気後れしてしまい、

消極的で自信がなくなってしまう。

   

このように、何事にも前向きになれず、生きづらくなったり、

建設的に生きられないと思うあるかもしれません。

私も同じでした。

学生の頃、恋愛で相手をとても傷つけてしまったことがありました。

自分から別れを切り出したくせに、

後悔して、罪悪感を感じていました。

今後恋愛はできないし、

恋愛する資格すらないんじゃないかと思いました。

自分は幸せになる資格なんてないと思っていました。

   

非建設的で不健全な罪悪感や自責感には、世界は公正であるべきという信念が背景にある場合があります。

メルヴィン・ラーナーという心理学者は,このような信念を「公正世界仮説」と言いました。

「正義は勝つ」、「因果応報」、「悪いことをしたら、悪いことが返ってくる」

という素朴な考えを私たち人間は信念として持っているのです。

   

スポーツで、努力が報われると信じて、試合に向けて練習することは大切です。

よい方向に前向きにとえられるならば、役に立つ理論です。

   

一方で、思い込みや誤解にもとづく、非建設的で不健全な罪悪感や自責感の場合には、物事の因果関係をポジティブに考えられなくなってしまいます。

悪いことをしてしまった自分には、幸せになる資格なんてないんだと思うのも、この公正世界仮説という信念に囚われている可能性があります。

罪悪感から自由になるためには、この「公正世界仮説」が思い込みに過ぎないと理解することが、一つの方法になります。

この世の中は複雑にできており、偶然の成り行きや巡り合わせがあるということです。

因果応報のように、「Aをしたら、Bになる」という単純なしくみにはなっていません。

恵みの雨は、誰の上にも降り注ぎます。恵みの太陽の光だって、みんなに降り注ぐのです。

なんだ、当たり前のことじゃないかと思われるかもしれません。

   

でも、私はこの公正世界仮説を知って、少し楽になったんです。

繊細、敏感、真面目な人は、律儀にもこの仮説を全ての場面で適用してしまう傾向があります。

ある一つの観点からすっきりと見通しをつけたい、確実な答えを知りたいと思うあまり、決めつけて安心感を得ようとしてしまうのだと思います。

曖昧さに耐えられないとき、この「公正世界仮説」を過度に適用してしまうのかもしれません。

このコラムの読者さんは、ずっとご自分を責めてきたのではないでしょうか。

つらい思いもしてきました。もう十分苦しんだと思います。

そろそろ自分を許してあげてもいいのではないでしょうか。

そろそろ自分を苦しめる物語を書き換える時だと思います。

   

自分を労って、自分を許して、小さな一歩でいいから、少し前に、進んでみてもいいのではないでしょうか。

ポイント

① 公正世界仮説という信念の影響で、幸せになる資格がないと思ってしまうのかもしれない。

② 世の中は、直線的な因果関係にもとづく単純な仕組みにはなっておらず、偶然や巡り合わせといった複雑な要素に気づこう。

③ もう十分に苦しんだのだから、自分を許して前に進もう。自分に許可を出そう。


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