「シロクマ実験」の罪悪感を癒やす心理学

投稿日(Posted on): 2023年9月7日 | 最終更新日(Last Updated on): 2023年9月8日 by 河野傑

   

今回は、心理学者ウェグナーのおもしろい実験を紹介します。

   

それはシロクマ実験といいます。実験結果をみるとちょっと考えさせられます。

そして、このシロクマ実験が罪悪感の癒やしのヒントにもなっています。

   

というわけで今回は、「シロクマ実験」の罪悪感を癒やす心理学です。

   

   

■ 「シロクマ実験」

   

心理学者ウェグナーの思考の抑制に関する実験で、おもしろい実験があります。

   

まず、実験参加者に、シロクマの生活に関するビデオを見せました。

その後、参加者を3つのグループに分けます。

   

最初のグループの参加者には、

「シロクマのことだけは考えないようにしてください」と指示しました。

   

次のグループの参加者には、

「シロクマのことを考えても、考えなくても自由にしていいですよ」と指示しました。

   

最後のグループの参加者には、

「シロクマのことを記憶しておいてください」と指示しました。

   

さて、これら3つのグループのなかで、

見たビデオの内容について、記憶の定着が最もよかったのはどのグループだと思いますか?

それは、なんと最初のグループでした。つまり「シロクマのことだけは考えないようにしてください」と指示されたグループだったのです。

   

このシロクマ実験では、思考を抑制しようすると、かえって、余計に思考が活発になってしまうという結果になりました。つまり、考えないようにしようとすると、逆に意識してしまって考えてしまうというわけです。

   

■ 考えないようにすればするほど・・・

このように、私たちは、「思い出したくない」と思えば思うほど、思い出してしまう傾向がありますよね。

   

例えば、もうお酒を飲まないようにしよう!と決意していたのに、コンビニのお酒の棚をふと見てしまう。

別れた恋人のことを考えないようにしようと思えば思うほど、いろいろな思い出がよみがえってきて、忘れられない。

お酒の席で酔い潰れた経験があまりにも恥ずかしくて、こうすればよかったと後悔したり、なんで自分はダメなんだろうと自己否定したりして、なかなか忘れられない。

   

■ ポイントは思考を抑制しないこと

「考えること」つまり思考を抑制したいときに働くのは、考えているかどうかチェックする機能であると

言われています。「シロクマのことだけは考えないようにしてください」と言われて、この指示を守ろうとするとき、「今自分はシロクマのことを考えていないよね?」「ちゃんと指示(※考えないという指示)の通りにやっているよね?」と確認(チェック)しているのです。

   

ですが、確認したその途端、シロクマのことが想起されてしまうのですね。これらの「考えること」と「チェックすること」の2つの機能が繰り返される結果として、ずっと考えて続けてしまうというわけです。

   

逆に、

「シロクマのことを考えても、考えなくても自由にしていいですよ」と指示されたグループのように、選択の余地がある場合には、思考が抑制されていません。その場合には、思考が活発になりにくく、忘れやすいと考えられます。

   

なお、

「シロクマのことを記憶しておいてください」と指示されたグループのように、抑制ではなく、解放してあげることも、(意外にも?)比較的忘れやすくなると考えられます。

   

■ 手放せないのなら、抱えて

そして、罪悪感の癒しにも、これと同じことが言えます。

罪悪感を癒そうとして、自分を許そうとしても、いつの間にか、自分を責めている。

   

こうすればよかった。なんでこうしたんだろう。

そういう思いから、自分が悪い気がして、自分を責め続けてしまう。

   

でも、

これはシロクマ実験と同じとみることもできます。

   

考えないようにしよう、考えないようにしようと、意識するために、かえって考えてしまうのです。

このように、罪悪感を手放さなければならない、また、罪悪感を手放さなれければ前に進めない。

そのように考えることで、かえって、自分を責めてしまう、自罰的な行動をしてしまう。

   

私自身もそういうことがありました。罪悪感を手放せるのなら、手放すのがいいですね。

   

でも、

うまく手放せないのであれば、罪悪感を抱えていくのも一つの方法です。自分を責めずに、罪悪感と上手に付き合って、罪悪感と一緒に生きていく。そんな心持ちでいると、逆説的ではありますが、いつの間にか手放せている(手放せた瞬間は気づかないかもしれませんが・・・)ことに気づくことでしょう。

   

   

ポイント

・罪悪感を抱えたままでも前に進める。

・罪悪感を手放せれば手放してもいいけれど、罪悪感を抱える時があってもいい。

   

参考文献

・Daniel M. Wegner. White Bear and Other Unwanted Thoughts, The Guilford Press, 1994.

・植木理恵. シロクマのことだけは考えるな!―人生が急にオモシロくなる心理術―. 新潮社, 平成25年.

参考UR L

・フリー百科事典 「ウィキペディア(Wikipedia)」皮肉過程理論

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9A%AE%E8%82%89%E9%81%8E%E7%A8%8B%E7%90%86%E8%AB%96

(2022年3月8日参照)


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