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折り合いをつけることの困難さ
Third Culture Kids(TCK)やCross-Cultural Kids(CCK)が直面する独特な課題の一つに、多文化環境への適応があります。異なる文化間での生活は、移動にともなう別れや選択にともなう折り合いが必要になることがあります。このような別れや調整は,TCKやCCKが自分の考えや感情に向き合うことであり,アイデンティティの形成におけるひとつのプロセスです。
エリザベス・キューブラー=ロス「悲嘆のプロセス」
このようなTCKやCCKにとっての移動に伴う別れや交差する文化間の調整は,悲嘆をもたらすことがあります。
この悲嘆については,スイスの精神科医であるエリザベス・キューブラー=ロスが提案した,死に直面する人々が経験する悲嘆の5段階モデルが参考になります。
この悲嘆のプロセスは、否定、怒り,取引、抑うつ、受容の5段階があるとされます。もともとは終末期の患者が経験する心理過程を説明するために提案されたものです。その後,様々な喪失や悲嘆の状況にある人々にも応用されるようになりました。
TCK(Third Culture Kids)やCCK(Cross-Cultural Kids)は、移動に伴う別れから悲嘆を感じたり、異なる文化間でのバランスを取る際に怒りや落胆を経験することがあります。彼らにとって,自分自身と周囲との調和を見つけることが重要です。
悲しみ,怒り,葛藤を感じて,表現することで受け入れる
悲嘆のプロセスにおいて,それぞれの感情を感じることは自然な反応です。これらの感情を受け入れ,上手に付き合っていくことがとても重要になります。
例えば,
“学校でのコミュニケーションは日本語なのに,家庭では別の言語を使用しているため,友達とのコミュニケーションに困難を感じる場面がある”
他にも,以前住んでいた国で通っていた学校では,積極性やユニークさが評価されていた。けれども,新しい学校で求められるのは,正解だったり,周りと同じであることであったりして戸惑うことがある。
悲嘆のプロセスにおける怒りは、TCKやCCKが自分たちの感情を正直に表現し、内面の葛藤を解消するための手段です。怒りを抑え込むのではなく、それを健康的な方法で表現し、処理することが,心理的な適応と発達には不可欠です。
背景と環境の両方へのアセスメントと思いやりが大切
TCKやCCKのサポートにおいて,悲嘆のプロセスにおけるそれぞれの感情を正しく理解し、表現する方法を学ぶことが助けになります。親や教育者は、彼らが感じる怒りを受け入れ、それに対して共感と理解を示すことが大切です。
TCKやCCKの背景をアセスメントし,状況に応じてTCKやCCK個人を支援するとともに,それを取り巻く環境(家庭,学校,コミュニティ)との関連を考慮することが大切です。
このような関わり方が,TCKやCCKが自己認識を深め、さまざまな文化的環境に適応するのを助けます。彼らは自身の多文化的背景を力に変え、豊かな自己表現を実現することが可能となるでしょう。
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