算数の文章題に苦手意識を持つ子どもたちは少なくありません。
この背景には、現前事象(直接目の前にある具体的なもの)と非現前事象(直接目の前にない抽象的なもの)に対する理解のギャップが存在します。
例えば、目の前にある「りんご」を見て「りんご」と言うのと、「りんご」という文字を読んでイメージするのとでは難易度が異なります。
保護者が絵本の読み聞かせを通して、言葉とイメージのギャップを埋めることが重要です。
このコラムでは、共同注意という心理学の概念を活用し、子どもたちが非現前事象を理解しやすくするための具体的な方法を紹介します。
さらに,日常生活の中での具体例を挙げながら、算数の文章題への取り組みを支援するヒントをお伝えします。
算数の文章題は大きな壁
外国につながる子どもに限りませんが,数字はわかるし計算は多少できるものの,文章題が苦手と感じる子どもたちがいます。
幼児期から少しずつ文字の読み書きを習得していく過程のなかで,話す聞くに比べて,読み書きは負担が大きいものです。
現前事象と非現前事象の違い
文章題が苦手という課題の背景には,現前事象(直接目の前にある具体的なもの)と非現前事象(直接目の前にない抽象的なもの)に対する理解のギャップがあります。
例えば、幼児期の子どもにとっては,お皿の上にある「りんご」を見て「りんご!」と言う場合と、
ひらがなで書かれた「りんご」という文字を見て,自分で声に出して「りんご!」と言う場合では,イメージのしやすさが異なります。
保護者が「今日どうだった? 何したの?」と保育園や小学校での出来事を聞くことがありますか。
そんなとき,子どもの反応が,いまいち・・・はっきりしないということがないでしょうか?
反応が少ない理由のひとつは,今日遊んだ具体的な物(おりがみで作ったかみひこうき,公園で遊んだジャングルジムなど)を思い出す手がかりがないからです。
絵本の読み聞かせというのは,言葉とイメージのギャップを埋める作業をしています。子どもは,保護者の読みを聞きながら,文字を見ずに(読まずに)絵の描写を見ていることでしょう。
非現前事象を理解すること,そして非現前事象から現前事象に無理なく橋渡ししていくことが,文章題が苦手という課題を乗り越えるヒントになります。
まずは読み聞かせ
算数の文章題に取り組むときのヒントになるのが,読み聞かせです。
これには,心理学の共同注意が関連しています。
共同注意とは,保護者と子どもが同じ対象物をみるという発達心理学の用語です。
お互いが同じ物を見るという行為を通して,関係性やコミュニケーションが育まれます。
読み聞かせは、この共同注意を通して,関係性やコミュニケーションを育むなかで,文字に対する心理的なハードルを下げ,算数の文章題の理解を助けます。
イメージを助ける工夫
日常生活のなかで,例えば,デザートでフルーツを食べるとき,お菓子を配るとき,実際に配るやりとりを通して,個数や均等に配る概念について,体験を通して学ぶことができます。
また,具体物(おはじき,好きなキャラクターなど)を用いると、興味やストーリーが生まれ,非現前事象への橋渡しになります。
文章の重要なポイント(数字,あわせて,ちがいは,など)に線を引き、それを基に図や絵を描いてみることも有効です。
このように,保護者と子どもの両者が対象物(具体物や算数の文章題)に注意を向けることで,子どもの理解を助けるのです。
まとめ
非現前事象と現前事象を橋渡しすることで,子どものイメージを助けるのがポイントです。
量,個数,重さ,長さを表す数字という概念に対して,イメージを持って具体的に理解することができます。
子どもと一緒に読んだり,子どもが自分で読めるようになってきたら,子ども主導で読みつつ保護者がそばで聞いたりするなど,徐々に移行していきましょう。
算数の文章題を楽しむ過程は、外国につながる子どもが自分の能力に自信を持ち、新しい学びのステップへと進むための大切な一歩となります。
大倉山カウンセリングでは,外国につながる子どもたちを含むすべての子どもたちが学ぶ喜びを見出せるよう、その子どもに合った支援を提供しています。
最後に、家庭での取り組みが難しい場合などお困りの際は、ぜひご相談ください。
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