「思い込み」の罪悪感を癒やす心理学

投稿日(Posted on): 2023年9月7日 | 最終更新日(Last Updated on): 2023年9月8日 by 河野傑

   

こんにちは。

カウンセラーの河野です。

   

今回は、

ある小説を通して罪悪感の癒やしについて

お伝えしたいと思います。

誰かを傷つけてしまったのではないかと、

罪悪感で苦しんでいるとき、

自分を責めているとき、

私たちはその状況を正しく

理解できているのでしょうか。

状況を正しく理解することが、

罪悪感を手放すためのヒントになります。

   

それでは、

今回は「思い込み」の罪悪感を癒やす心理学です。

   

藤沢周平の小説に

「高札場」という作品があります。

   

主人公の男性は、若い時に婚約者と別れ、

その後、別の女性と結婚します。

一方、

別れた方の女性も、また別の男性と結婚します。

しかし、

短い結婚生活の末に病気で亡くなってしまいます。

そして、

主人公の男性は老年に差し掛かり、

若い時に婚約者だったその女性と

別れたことに悔いて、

切腹してしまったというお話です。

主人公の男性は、自分のせいで、

元婚約者の女性が、不本意な結婚をして

身体を壊して、亡くなったと考えたのでしょうか。

ところが、その罪悪感や後悔は、

思い込みだったのです。

元婚約者の女性の友人によると、

その女性が結ばれた相手は

とても良い人だったそうです。

そして、短かったけれど、

仲睦まじく幸せに暮らしていたとのこと。

病気になったのも、

偶然にかかった「はやり病」だったそうです。

   

主人公の男性は、

「自分が相手を幸せにするべき」

「自分なら幸せにできたはず」という規範意識を

もっていたと推測されます。

主人公の男性は、自分のせいで、

その婚約者の運命を変えてしまったのではないか、

不幸にしてしまったのではないかと考えて、

ずっとその思いを握りしめていたと思われます。

   

別れてしまったということで、

振り返ったとき、主人公の男性にとって

自分が悪いという判断に至ったのかもしれません。

   

しかし、

元婚約者の女性の友人の話にあったように、

これは「思い込み」でした。

   

心理学では、

罪悪感という感情は、自己意識感情という

二次的感情に分類されます。

自分が自分をどう捉えるかということに

起因する感情です。

そして、規範意識が高過ぎると、

「こうあるべき」と思うために、

「こうできなかった」ときに

自分を責めてしまうことが多いようです。

   

元婚約者の女性も当座は傷ついたのでしょう。

でも、この主人公の男性には、

相手の巡り合わせを信じることが必要でした。

   

自分が相手を不幸にしてしまった。

自分なら相手を幸せにできたはず。

このような考え方は、

自分中心で背負(しょ)った考えなのかもしれません。

   

そもそも相手は、

自分の所有物でも、

コントロールできる対象でもありません。

無力な存在ではないのです。

相手を信じること、

相手の巡り合わせを信じること。

   

時には、自分ではない誰か(あるいは何か)が

相手を幸せにするだろうと信じることです。

相手にとっての良い巡り合わせを信じることが、

握りしめていた「自分が」を手放すことになります。

   

だから、

思い込みを見直してみること。

「自分が」という思い込みを

手放してみること。

   

「自分こそが幸せにしなければならない」

「自分なら幸せにできたはず」という

思い込みのなかにある「自分」を手放して、

相手の巡り合わせを信頼してみることが、

罪悪感を手放すことにつながります。

   

● ポイント

人間関係の罪悪感で苦しい時、握り締めている「自分が」、「自分なら」という思いを手放して、相手の巡り合わせを信頼すること。

   

● 参考文献

藤沢周平. 三屋清左衛門残日録, 2007年, 文春文庫.


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