父親も経験する「産後うつ」へのセルフコンパッション

投稿日(Posted on): 2023年9月22日 | 最終更新日(Last Updated on): 2023年12月6日 by 河野傑

父親の7-9%程度が、子どもの出生後にうつになることが指摘されています。妻の出産後3ヶ月から6ヶ月の期間で9.23%と最も多いようです(参考文献よりーPrevalence of prenatal and postpartum depression in fathers: A comprehensive meta-analysis of observational surveys)。

   

子どもの出生前後の父親のうつ(prenatal and postpartum depression in fathers)については、母親の産前産後のうつに比べてそれほど知られていませんでした。イクメン、父親の育児、育児休業など、共働き家庭が多くなり、父親も育児をすることが当たり前、フツウのこととみなされるようになってきました。

しかしながら、会社での仕事の負担は変わらないまま。そして、父親の育児に関する知識やサポートはそれほど普及してはいないようです。仕事は時間をかけて集中して取り組むことで、ある程度の成果が出る場合があると思います。一方で、乳児や幼児が相手だとなかなかそうはいかないものです。頑張って料理作っても食べてくれるとも限りませんし、頑張って抱っこして子守唄を歌っても眠ってくれるとは限りません。

   

そんな中で、会社や上司に対して、「良き社会人でなければならない」、妻に対しては「良き夫でなければならない」、さらに、イクメンがフツウになった昨今において、「いい父親でなければならない」と思い込んでいないでしょうか。会社からは育休復帰したら仕事を大量にあてられたり(あるいは復帰後なかなか居場所をもてなかったり)、同僚からはバックアップしてもらったから今更頼めないし・・。妻も忙しく働いていて頼れそうにない。子どもも親の思い通りに動いてくれるわけではないし。しかも、他の父親はちゃんとやっていて仕事も家庭も両立しているように見える・・・そんな状況で孤立していませんか。

   

育児、特に出生前後は、個人だけでなく、家族全体、会社や原家族との関係など広い視点でとらえていく必要があります。父親の頑張りが足りないせいではありません。母親も父親も親として支援を受けることが必要な場合があります。助けを求めることを、助けを求めていいのだということを、自分に許可することが、大切になってきます。

   

大倉山カウンセリングでは、母親だけでなく、父親の育児や家庭のご相談も受け付けております。お気軽にお問合せください。

   

最後に、父親の産後うつという表現について。父親は出産しないのに「産後うつ」?と違和感を覚えたかもしれません。参考文献の論文では、”prenatal and postpartum depression in fathers”と書かれていました。”prenatal and postpartum“は、産前産後とも出生前後とも訳してもよさそうです。誕生(出産)という事象を、子どもから見るか母親から見るか、「子どもが生まれる」か「母親が産む」か、ということなのでしょう。「父親の育児うつ」と表現してもいいのかもしれません。この用語の違和感も「父親の産後うつ」という現象にあまり馴染みがないことの表れのようにも思いました。

   

参考文献

Rao, W. W., Zhu, X. M., Zong, Q. Q., Zhang, Q., Hall, B. J., Ungvari, G. S., & Xiang, Y. T. (2020). Prevalence of prenatal and postpartum depression in fathers: A comprehensive meta-analysis of observational surveys. J Affect Disord, 263, 491-499. doi:10.1016/j.jad.2019.10.030


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