いい親になろうとするよりも大切なこと

投稿日(Posted on): 2023年9月8日 | 最終更新日(Last Updated on): 2023年12月6日 by 河野傑

かつての子ども時代に、私は「いい子でなければならない」と汲々としていました。大人になって、子育てをしているとき、またしても「いい親にならなければならない」と思い込み、あくせくしていることに気づくことがあります。やはり、私自身、社会の目、つまり他人からどう思われるかを気にしているようです。

   

私の子育ては、私が受けた、親の子育ての影響を受けているのでしょう。また、親の価値観を、自分のなかに取り込んでいるのかもしれません。何のためにいい親になろうとしたり、ちゃんとやろうとしてしまうのでしょうか。ということで、今回は、いい親になろうとするよりも大切なことにきづくための心理学です。

   

子育てには、色々な場面がありますが、歯磨きって意外と大変ですよね。 子どもの保育園で、歯科検診の結果をもらった時のことです。「奥歯に小さな虫歯があります」とのことでした。大袈裟かもしれませんが、私は頭をガーンと叩かれたように思いました。この子は、生まれて2年くらいしか経っていないのに。歯が生え始めて、まだ1年くらいなのに、もう虫歯が・・・。なんてことをしてしまったのだ。私の歯磨き方がよくなかったのだ。私がいけなかったんだ。ダメな親だ。親失格だ。こんな風に思いました。

   

もちろん、子育ては歯磨きだけではありません。お箸の持ち方、食事の時の姿勢、トイレットトレーニングなど、さまざまな子育ての場面で「ちゃんとやる」ことが求められているような気がします。きれいに、はやく、汚れないように、しかも楽しく、自分でやってみたいと思えるように・・・ 。そして、前よりはうまくできるように。色々な条件を課してしまいます。

   

しかしながら、何より重要なのは、心の余裕なのかもしれません。子どもが食べ物で遊んでしまうとき、親に余裕があれば、『あんまりおいしくなかったね。ちょっと遊びたいのかな』と理解できます。でも、親に余裕がない時は、『食べ物で遊ぶなんて礼儀がなってないし、作った人や食べ物に失礼でしょー!ちゃんと野菜も食べなさい!』となってしまう。

   

最終的には、子育ては親の責任なんて言われると、そんなのわかっているけれど、だからこそ、いつもうまくはいかないし、人の目が気になります。その親の評価というものは、どうしても、子どもがちゃんとできているかによって、評価されるような気がしてしまいます。

   

社会からの「圧」を受けて、親が子どもへまた「圧」をかけてしまい、かえって、子どもが反発してしまう。悪循環です。

   

以前、発達心理学は、児童心理学と呼ばれていました。発達するのは子どもの期間だけで、人間は大人になったら発達しないと考えられていたからです。

   

しかし、現在では、人間は一生涯にわたって発達・変化し続ける存在であるとされています。また、親性脳の研究もされていて、子育てを通じて、あるいは子どもと関わることで、性差に関わらず、親として発達していくことも確認されています。

   

つまり、親も子どもも変化して、成長するのです。仮にこの今、子育てが大変だったとしても、そのような状況は、ずっとは続かないということです。

   

今では私が歯磨きをしていると、その子どもは、真似して「ハミガキー」と言って、歯ブラシを持って(できないなりに)歯磨きをしています。歯磨き粉をつけてあげると、自分でシャカシャカして、笑っています。

   

もちろん、虫歯がないに越したことはありません。そして、虫歯にならないように、仕上げの歯磨きをちゃんとすることは大切だと思います。でも、「ちゃんとしなければならない」、「子どもが虫歯を作らせないような『いい親』にならなければいけない」と思って、シャカリキにやると、見落としてしまう何かがあるのではないでしょうか。

   

   

ポイント

●「ちゃんと、しっかり」よりも「ほどよく、楽しく」

● 周りに頼って、気持ちの余裕を作り出そう。

● 子どもも親も発達する。だから、つらい状況はずっとは続かない。

   

参考文献・参考U R L

・ 一般社団法人 平和政策研究所NO.200 2021.6.1 政策オピニオン

明和 政子「ヒトの脳と心の発達を支える共同養育の役割」https://ippjapan.org/pdf/Opinion200_MMyowa.pdf(2022年5月10日参照)


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