「手を貸しすぎないでください。
子どもが自ら歩き出す機会を、どうか奪わないでください。」—— マリア・モンテッソーリ『モンテッソーリ教育の理念』より
1. 子どものために、よかれと思って
子どもにこんなことを言われたとき、どう反応していますか?
「野菜は食べたくない!」
「テレビをもう少し見たい!」
「抱っこして!」
つい、「ちゃんと食べなきゃダメでしょ」「テレビはもう終わり」「自分で歩いて」…と言いたくなること、ありませんか?
私はそうでした。
「よかれと思って」「子どものためを思って」が厳しすぎると、子どもは「自分の意見を言っても、どうせ聞いてはくれない」と感じてしまうこともあるようです。
「しなさい」「してはいけません」と言われるたびに、
- 「自分の意見は大事にされない」
- 「自分は親に心配されている存在なんだ」
- 「自分で決めることは許されないんだ」
そんな気持ちが、子どもの心に積み重なっていくこともあるのです。
2. 親が「意見を引っ込める」ときに起こること
親の意見を引っ込める、というのは、子どもの意見をすべて受け入れるということではありません。
あくまでも、「自分の意見を言ってもいい」という感覚を育てることが目的です。
たとえば…
「野菜を食べたくない!」 → 「じゃあ、どんな野菜なら食べられそう?」
「テレビをもう少し見たい!」 → 「あと何分なら納得できる?」
「抱っこして!」 → 「ちょっとだけならOK。でもおうちに着いたら歩こうね」
「ダメ!」ではなく、「どうしようか?」と一緒に考える。
こうすることで、子どもは、
- 「自分の意見を言ってもいいんだ」
- 「お父さん・お母さんは、ちゃんと話を聞いてくれる」
- 「自分の考えも大事にされている」
そう感じるようになります。
認知行動療法からみる、自分の意見が尊重されること
心理学の世界には、「認知行動療法」という考え方があります。
これは、自分の考え方や感じ方が、行動にどのような影響を与えるのかを知ることで、ストレスを減らしたり、自分を肯定的に捉えたりする手法です。
子どもの場合、「自分の意見が尊重される」経験は、自己肯定感につながります。
つまり、
「自分の考えが受け入れられる → 自分の価値を感じる」
「親が信頼してくれる → 自分の判断に自信が持てる」
逆に、「しなさい」「ダメ!」が多いと、
「どうせ言っても無駄 → 自分で考えなくなる」
「いつも指示される → 失敗を恐れるようになる」
こんなふうに、「自分で決める力」を育む機会が減ってしまうこともあります。
子どもの口ぐせで気づいた、許可やジャッジする親自身の態度
私も親として実感したことが何度もあります。
「・・・したらダメだよね?」「・・・は、できないよね?」
いつの間にか、子どもの口ぐせが、非定形になっていた時は少しびっくりしました。
同時に、ちょっと厳しく言いすぎていたんだなと反省しました。
子どものあれしたい、これしたいに対応していると良し悪しを判定するような捉え方になって、許可するような、ジャッジするような態度が多かったのかもしれません。
子どもが自分なりに考えて、あるいは、他の子どもたちがやっていることを真似したくて、せっかく「これしたい」と言ってくれていたのに、です。
単なるダメではなく、どうしてしたいと思ったのか、背景や気持ちを理解するようにしたいなと思っています。
少しだけ親の意見を「引っ込める」ことで、子どもの成長を見守る
「親の意見を引っ込める」ことは、子どもを放置することではありません。
むしろ、「あなたの考えを大事にするよ」と伝えること。
「ちゃんと話を聞いてもらえる」「自分の気持ちは尊重される」と感じた子どもは、自分の意見を持ち、それを伝える力を育てていきます。
もちろん、すべてのことを子ども任せにするわけにはいきません。
でも、「どこまでなら子どもに選ばせてもいいか?」を考えてみることは、子どもが自分で考えて行動する一歩になるはずです。
ちゃんとしつけること、しっかりルールを教えること、それが親の責任。そう思って、厳しくしすぎてしまうこと、ありませんか?
でも、少しだけ「親の意見を引っ込める」ことで、「子どもが自分の考えを持つ力」を育てていると考えてみてはどうでしょうか。
大丈夫、子どもはちゃんと見て、考えています。
親が全部決めなくても、「この子なりのやり方で考えていく」力を持っているのです。
「意見を引っ込めること」は、子どもの力を信じること。
そう思えたら、少しホッとしませんか?
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