子どもの気持ちを認めて寄り添う自己肯定感を育てる心理学

投稿日(Posted on): 2023年9月12日 | 最終更新日(Last Updated on): 2023年12月6日 by 河野傑

子どもの自己肯定感を育てようとするとき、子どもの気持ちに寄り添い、褒めたり、認めたりすることが大切なのは言うまでもありません。ですが、この正論がなかなか実践できないのです。わかっているけど難しいのです。それは、自分は親から褒められたことがないのに、親として子どもを褒めたり、優しくすることが難しいと思ってしまうから。そんなとき、自分がそうしてほしかったように、子どもに接してみることは、子どもにとっても、そして、かつて子どもだった今親であるあなたにとっても、癒やしとなり、価値のある経験になります。

   

自分の親は厳しかった。自分が子どもだったとき、褒められたことがほとんどない。自分のことを認めてくれた記憶なんてない。いつも、「いい報告」しか聞いてくれなかった。幼稚園や学校での、揉め事やケンカなどの面倒なことは聞きたくない。自分が奔走して解決したり、頭下げたりして疲れるから。評判や体裁も悪くなるし。迷惑をかけない、お利口な子、良い子でいてほしい。〇〇ができるようになった、先生に褒められた」そんな報告ばかり欲っしてしまう。よくない報告の時は、つまらなそうで、嫌そうで、面倒くさそうだった。不機嫌になったり、怒られたりした。

   

子育ての通説である、「自主性を育てる」「いい子でいてほしい」「他人に迷惑をかけない」の背景には、このような親の都合が見え隠れします。

   

仕事が大変な分、家庭ではリラックスしたい、団欒したい、心配事なんて起こってほしくない。親も忙しく、疲れているのです。

   

そんな子ども時代を思い出すとき、自分は子どもの時に、親から褒められたり、認められたりという経験がない。自分だけ子どもを褒めるのはちょっと納得いかない。自分が褒められたことがないのに、自分の子どもを認めたり褒めなければならないのは、損している気分になる。自分こそが褒められたかったのに。自分は親として、どう子どもを認めて、褒めてよいのかわからない。

   

このように思うのも、無理ないことなのかもしれません。

      

田中(2011)では、そんな時、「やり直せる立場にある」と言います。

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「もし仮に、自分が幼かった頃、このような場面で、親からやさしくしてもらっていたら、はたして、自分は今より、ダメな大人になってしまっただろうか、それとも、幸せな人間に育っただろうか、と。

そして今、自分は、親として、そのような場面をやり直せる立場にあるのだ、と。」

「あなたが子どもにやさしく接している時、子どもを大事にしている時、あなた自身の心の一部は、あなたの子どもに溶け込んで、一体になっているのです。

そして、今は親となっている自分から、子どもとして、愛情を受け取っているのです。

子どもにやさしく接すると、なぜか自分も、気持ちが良くなったり、幸せな気分になれるのは、そういう仕組みなのではないかと、私は考えています。

子どもを大事にすることは、自分が子どもであった過去に遡って、子どもの頃の自分のことも大事にしていることになるのではないかと、私は思います。」

田中(2011)より

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子どもの自己肯定感を育てようとするとき、子どもの気持ちに寄り添い、その行動を理解しようとすることは大切です。これは、正論です。

   

でも、わかっていても、なかなかできないものです。特に、自分自身が生きづらさを抱えていたり、自己肯定感が低いと感じたまま親になった場合、余計に難しく感じます。そんなとき、今厳しく叱ろうとしている相手は、かつてのあなただと考えてみること。 かつて、子どもだったあなたは、親になんと言われたかったでしょうか。

   

お母さん(お父さん)は、わかってくれるはず。お母さん(お父さん)には、わかってほしい。味方でいてほしい。そう、思ったのではないでしょうか。そんな子どもだったあなたに、間違っているからと言って頭ごなしに叱っても、教育的効果は少ないかもしれません。

   

厳しく叱ったところで、子どもであるあなたは理解できたでしょうか?親が怒った、怖かった、そんな記憶だけが残ってしまう。自分がされて嫌だったり、意味を感じられなかったりした接し方を繰り返すよりも、子どもの気持ちに寄り添い、その行動を理解しようとする方が、親にとっても過去の傷の癒やしにつながるのではないでしょうか。

   

自分がそうしてほしかったように、子どもに接してみることは、子どもにとっても、かつて子どもだった今親であるあなたにとっても、癒やしとなり、価値のある経験になるのではないでしょうか。

   

参考文献

田中茂樹 2011  子どもを信じること 大隅書店


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