「受け入れること」のチカラ

投稿日(Posted on): 2024年1月26日 | 最終更新日(Last Updated on): 2024年2月21日 by 河野傑

後悔や失敗や短所と和解すれば,チカラになる。自分自身をコンパッションで友だちとして受け入れるためのコラム。

   

悪しくとも 只一筋に捨つるなよ

渋柿を見よ 甘干となる 

一休禅師

 細川景一 「禅語に学ぶ生き方 白馬 蘆花に入る」2005年 禅文化研究所

   

成分の分解といった化学的な変化によって,渋みが甘味に変わるのは,不思議ですね。

一見して不要にも思える渋柿の渋さ。

つい捨ててしまいたくなる渋柿ですが,実際には,その渋さこそが甘味に変わり得るという短歌です。

   

渋柿の渋みは,短所だったり,恥ずかしい失敗だったり,後悔だったり。

うまくいかないことを表している気がします。

言うまでもなくなく,「雨降って地固まる」,「人間万事塞翁が馬」など,一見マイナスに思えたことが,プラスに転じるようなことは昔から言われてきました。

   

私たち人間というのは, 整った秩序が好き,わかりやすさが好きです。

きれい好きと言っていいのかもしれません。

起きた原因がわからないとき,混沌としたもの,先行きが不透明な状態が苦手です。

わかりにくいことよりも,わかりやすいことを求める傾向があります。

   

曖昧さを嫌って,ときには潔癖になったりもします。

白黒をはっきりとつけたいこともあります。

ネガティブな感情,例えば,後悔や罪悪感を抱えることが苦手なのです。

「妥協」という宙ぶらりんの状態も苦手です。

だから,渋柿の「渋み」だったり,禍福の「禍」だったりを取り除きたい。

自分の短所,後悔,そして失敗を分析して修正したい。

そう思うのは自然なことです。

   

でも,人生を前に進めるには,このような相容れない要素を受け入れていくことが鍵になっていきます。

バランス感覚だったり,中庸にも通じるものがありますね。

   

「メメント・モリ(死を想え)」という言葉があります。

生まれる場所を選べず,どこでどう終わるかわからない。

生きている期間を選べず,いつ終わるかわからないのです。

そんな人生を考えた時の方が,かえって,与えられた人生の中でどう生きるか,何ができるかを考えるようになります。

有限さを忘れずに生きる時,限りある生が充実するのですね。

   

渋さは甘味に変わる。

有限は充実に変わる。

一見して相反するようなことが,大切なことってありますよね。

   

   

   

反すう思考と上手に付き合うことも同じです。

相容れない要素の存在が,かえって重要な働きをします。

私たちは,自分の失敗を挽回しよう,自分の短所を直そう,そう思ってしまいがちです。

   

『後悔はあってはならないものではありません。ほどほどの罪悪感を抱えながら生きていくということが,僕らの普通の姿です。』P.145

『「残念だな,でも仕方ない」というのもいい落としどころだと思います。』P.146

益田裕介「精神科医が教える親を憎むのをやめる方法」2023年KADOKAWA

   

セルフ・コンパッションでいう,いわば「共通の人間性」と言えるでしょう。

   

私たちは,原因を探し突き止め,修正したいと思っています。

それは,よりよく生きたいから。

でもそんな時に,いえそんな時だからこそ,自分の短所や後悔を責めて否定して,克服したり消そうとしたりしない。

そんな関わり方もあってもいいのではないでしょうか。

   

つまり,自分に寄り添い,自分と友だちのように関わることです。

本当に大切なのは,自分と和解することなのです。

そうすることで,心理学のゲシュタルトの「図と地の反転」が起きるのですね。

   

私たちは,他人にはコンパッションをかけやすくのに,自分にはコンパッションをかけられないと思ってしまっています。

ダメな自分,悪い自分のことは,自分が一番よく知っているから,エゴイズムのようでずるくて,自分にだけは優しくできないと思い込んでいるのです。

でも,むしろ反対です。

悪い自分のことは自分が一番よく知っているから,エゴイズムのようでずるいように見えますが,実は自分にこそコンパッションをかけるに値するのです。

   

コンパッションをかけにくい自分だからこそ,コンパッションに値するのだと思います。

自分に寄り添い,自分と友だちのように関わって自分と和解してください。

渋みを甘味に。

有限を充実に。

そうすることで,反すう思考と上手に付き合っていくことができるはずですよ。


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