完璧じゃなくてもいい ― good enough multicultural の視点から


ある外国につながるご家庭の親御さんは、こう語ります。

母親の言葉である日本語は母国語だから、しっかり身につけさせたい

英語もできるようになってほしい。できれば父親の母国語も大切にしてほしい。

でも、どれも中途半端で、親として失格なんじゃないかと思ってしまうんです。

このように、父親や母親の言葉をちゃんとつかえるようになってほしい、ルーツのある文化を知ってほしい、そんなプレッシャーを感じているご家庭は少なくありません。

1. Winnicott の “good enough mother” が教えてくれること

イギリスの精神分析医D.W.ウィニコットは「完璧な親」ではなく、“good enough mother(十分によい母親)” でいいと説きました。

  • いつも子どもを喜ばせる必要はない
  • 不完全な応答も、子どもに現実を知る機会になる
  • 大切なのは「親が子どものサインに応答していること」

つまり、子どもに100%正解を与えるのではなく、応答しながら一緒に歩む姿勢こそが、心を育てるのです。

2. 多文化子育てにどう生かせるか

この考え方はそのまま、多文化や多言語の子育てにも当てはまります。

  • good enough diversity(ほどよい多様性)
     どの文化にも完璧に適応できなくてもいい。家庭で触れた経験が子どもの基盤になります。
  • good enough bilingual(ほどよいバイリンガル)
     言語に偏りがあっても「ゼロではない経験」が必ず資源になります。
  • good enough adaptation(ほどよい適応性)
     どの文化や言語を選び取るかは、最終的に子ども自身の判断に委ねられます。

「中途半端」と見えるものも、子どもにとっては確かな土台になるのです。

3. 心理学のヒント

  • セルフ・コンパッション(Neff, 2003)
     「できなかった」と責めるのではなく「よくやっている」と優しく認める態度。
  • 社会的比較理論(Festinger, 1954)
     理想と比べて落ち込むのは自然な心理。でも、大切なのは「今ここにある自分たちの生活」。
  • 公正世界仮説(Lerner, 1980)
     「正しくやれば必ず成功する」という幻想から自由になることで、子育てはもっと楽になります。

4. ご案内 ― カウンセリングの場でご一緒に考えてみませんか?

もし今、

  • 「多言語・多文化の子育てに不安がある」
  • 「子どもの将来の言語や文化の選び方に迷っている」
  • 「親として失格かもしれない、と自分を責めてしまう」

そんな思いをお持ちでしたら、心理カウンセリングを通じて一緒に整理してみませんか?

初回カウンセリング(オンライン・対面)

  • 時間:50分
  • 料金:5,500円(税込)
  • 内容:現状のお悩みを整理し、心理学の枠組みをもとにご家庭に合った方向性を一緒に考えます。

5. お申込みはこちらから

「完璧じゃなくてもいい」と実感できる場を、あなたにも。
まずはお気軽に初回カウンセリングをご予約ください。

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📚 参考文献

  • Winnicott, D. W. (1953). Transitional objects and transitional phenomena. International Journal of Psychoanalysis.
  • Festinger, L. (1954). A theory of social comparison processes. Human Relations.
  • Lerner, M. J. (1980). The belief in a just world: A fundamental delusion. Springer.
  • Neff, K. D. (2003). Self-compassion: An alternative conceptualization of a healthy attitude toward oneself. Self and Identity.

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